過つは彼の性、許すは我の心 壱


「…ごめんなさい、兄も綴ちゃんも大好きなんで思わず抱き着いちゃって」


 と思った瞬間、夏波ちゃんは私から離れて行った。


………少しも残念に思ってない、思ってない。(嘘残念に思っている)


 今妃帥ちゃんを見たらきっと残念に思っていることがバレてしまう。そもそも渚君に支えられている状況もも浮気では?

 ハッとなって今度は私が渚君から離れようとしたら、


「まさか、私の事を好きだと言った貴方が綴を好きなんてね」


 妃帥ちゃんは爆弾発言をかました。

 真っ直ぐ妃帥ちゃんが見つめる相手は…渚君。

 私と同じ部外者なのに、渚君やたら天條家について詳しいと思っていたけれど…。


『聞き齧ったとはなんや!一応調べたり聞いたりしたわ!』


 あの発言はこういう意味だったのね。

 にしても、


「俺もビックリした。つづちゃんが、まさかこっちの坊々ちゃうくって、妃帥やとは思えへんかった」


 空気が良いとは言えないのは何故なのか。

 渚君の言い方は冷めきっていて、とてもじゃないが好きだった人へと向けるものではなかった。


「あら、冷たいのね」

「自分がそれ言うんか」

「前は雛の様に私の後を付いて回っていたのに」


 嘲る様に言う妃帥ちゃんに、私を支える渚君の手に力が籠る。


「…あん時は俺もあほやった。右も左も分かれへん中、お前に惹かれたのも事実や」


 言葉を選ぶ様に渚君は語る。