過つは彼の性、許すは我の心 壱



「先輩と仲良いもんね」

「うん…」

「まあ噂っちゃ噂だから、そんなに気にすなって」

「そう、だねうん」


 よしっと私が気合いを入れると「お、そのいきだ!」と友達も慰めてくれたのを最後に昼休憩が終わった。


ーーーそして、現在。


「やってしまった…」


 着物の少女と別れた後に6限目を丸々サボった事実を知り、大慌てで教員室に向かったが後の祭り。

 担任からお小言を頂戴する羽目になり、すごすごと帰る道中。


「たが…!」

「違うんで…」


 空き教室が立ち並ぶ廊下を通り過ぎようとしたところで、人の争う声が聞こえた。


 何々人呼んだ方が良さそう?


 一応誰がいるか確認しようと、口論する人たちにバレないように戸を少し開けた。


「や、やめてください」

「貴方なんて…!」


 見間違いのない女子生徒の後ろ姿。

 その人が振り上げた物は。


「っ!姉小路先輩!」


 背後から飛びつき、手を握って押さえようと揉み合う。


「何!?」

「落ち着いて下さい!」


 女神が鬼神に変わったかの如く、強い力で振り払おうとする。

 でも、私の本能が止めなきゃマズイとお知らせしてくるので必死に食らいつく。


「うるさい!離してよ!」

「駄目です!先輩そんなことしたら!」


 グサっと。


「え…」


 バタフライナイフの本来の目標であるモサイ男子生徒?いや女子生徒?の声が、時の止まった場所に響いた。