過つは彼の性、許すは我の心 壱


「その間にあの子も学校に来る様になった。腫れ物扱いする人もいたし、虐める人もいた」


 怒涛の様な変化に、私はオロオロするしかなかった。


「で、中学3年生になって初めての全校集会で、あの子が遅れてあらわれた」


 そして、

 ナイフがヒラヒラと舞った。

 血と悲鳴が、陽だまりの体育館に広がる。

 
「いじめの主犯格の女子生徒の顔をナイフで一閃、そこから周囲を刻みに刻みまくって、私の前に来たら首を、」


 横からシュッと。

 言葉にするのも気分が悪い。

 顔に飛び散った血も、彼女の顔も忘れられない。

 忘れちゃいけない。


『許さない』


 目を瞑って開く。あの子はいない。

 息をふーっと吐き出す。


「私何にもしなかったし、何も出来なかった」

「…」

「勝手に病んで家族に面倒かけて、逃げ出してここに来た」

「…」

「もう、それだけ」

「…」


 聞いた割には黙りこくってしまう着物の少女。

 まあそうだよね、話した私でもげっそりした。

 胸に残る黒い塊は、吐き出し切れない。

 未だに思い出しただけで喉が塞がる。


「綴は、」


 ぼんやりとした私の意識に、着物の少女の声が入り込んでくる。

 
「ん?」

「綴は、その子にーー…」


 と、何か言いかけた直後。


「あ」


 保健室に着いてしまった。


「先生ー…っていない」


 ガラリとドアを開ければ、保険医も留守にしているようで誰もいなかった。