「その間にあの子も学校に来る様になった。腫れ物扱いする人もいたし、虐める人もいた」
怒涛の様な変化に、私はオロオロするしかなかった。
「で、中学3年生になって初めての全校集会で、あの子が遅れてあらわれた」
そして、
ナイフがヒラヒラと舞った。
血と悲鳴が、陽だまりの体育館に広がる。
「いじめの主犯格の女子生徒の顔をナイフで一閃、そこから周囲を刻みに刻みまくって、私の前に来たら首を、」
横からシュッと。
言葉にするのも気分が悪い。
顔に飛び散った血も、彼女の顔も忘れられない。
忘れちゃいけない。
『許さない』
目を瞑って開く。あの子はいない。
息をふーっと吐き出す。
「私何にもしなかったし、何も出来なかった」
「…」
「勝手に病んで家族に面倒かけて、逃げ出してここに来た」
「…」
「もう、それだけ」
「…」
聞いた割には黙りこくってしまう着物の少女。
まあそうだよね、話した私でもげっそりした。
胸に残る黒い塊は、吐き出し切れない。
未だに思い出しただけで喉が塞がる。
「綴は、」
ぼんやりとした私の意識に、着物の少女の声が入り込んでくる。
「ん?」
「綴は、その子にーー…」
と、何か言いかけた直後。
「あ」
保健室に着いてしまった。
「先生ー…っていない」
ガラリとドアを開ければ、保険医も留守にしているようで誰もいなかった。



