過つは彼の性、許すは我の心 壱


 え?と思って凌久君の顔を見やれば、驚くぐらいつ冷めた表情で洋直ちゃんを見ていた。

 その表情に、急に現実に引き戻される。


「だから私、多少辛いことがあっても耐えられると思ったんです」


 洋直ちゃんは凌久君の様子に気付いた様子もなく話を続けている。


「フレアにいる時間は辛いこともあったし、確かに追い詰められてもいたんですけど、獅帥先輩が居るって思うだけでも頑張れちゃって…」


 思いを語る洋直ちゃんを横目に、凌久君の天條君に対する言動を思い出す。

 凌久君きっと天條君のこと嫌い…いやただの嫌いではなく、憎悪に近いものを感じるのは気のせいか。


「私馬鹿ですよね…」


 凌久君の憎悪の在り方が気になるけど、今は洋直ちゃんの話を聞かなきゃ。

 ごほんと心の中で咳払いする。

 自嘲気味に話す涙目の洋直ちゃんに対して、

 
「馬鹿じゃないと思うよ」


 素直な感想を述べた。


 洋直ちゃんの場合は恋なのか、それとも地獄に伸びた蜘蛛の糸と思っているのか、判断つき辛いけど。

 真面な恋愛をしたことのない、少女漫画とおばあちゃんの話だけでしか理解していない私からすると、それだけ人を好きになるって凄いことだと思ってしまう。

 同じように思っていた友人が知らぬ間に一段大人になっていた気分。