少しだけ口籠るように、でもうっとりした口調で、
「天條先輩に会って…今までの人生がこうパアッと変わったんです」
思いの籠った声で言った。
フレアであんな扱いされても、未だに天條君のことは嫌いにはなっていない様子だったのが不思議に思っていた。
学校でも家でも居場所がなく、一番身近な相手には当たられるし、その周囲の人間にも虐められてーーー。
人生のドン底で天條君みたいな完璧人間に優しくされ、救われたりしたら、そりゃあ好きになるよね。私でも好きになるわ。
洋直ちゃん表情や声色がいつも暗い印象なのに、天條君のことを話す時だけは本当に年相応の女の子に見える。
見えるんだけど、
「冷たい印象しかないと思うんですけど、本当はとっても優しいんです。困っている時は必ず助けてくれるし、触れる時も…」
何だろう。
恐らく天條君との密な思い出を想起して、両手を頬に当て恥ずかしがる洋直ちゃんは恋する乙女そのものなのに。
それは恋?憧れ?狂信?
形容し難い感情が私を支配する。
所詮まともな恋愛をしたことのない私には理解しきれない。
私が悪いの?
『ねえ綴…私ね、本当はアイツのこと、』
あの子が頬に触れる距離で囁く。
聞きたくない、聞きたくない。
「はっ…」
誰かが鼻で笑った。凌久君だ。



