だめだめ、思い出すな。
「だから2人から離れた」
未だ癒えぬ傷がジクジクと痛み始めるまえに、話しに戻る。
「私がいなくても2人とも上手くいっているのかと思ってた。けど知らない内にあの子が悪い人と付き合い始めてね」
「うん」
「彼もあんなに好きだった部活も出ずに、毎日治安の悪いクラブまで行って止めようと頑張ったんだけどーー…事件が起きたの」
唾を飲み込む。
“あの時”みたいに携帯が震えている気がした。
「あの子が酷い暴行された姿で見つかったの。しかもあの綺麗な容姿が幻だったかの様な容姿にされて、生きていたのも奇跡だって」
ベッドに横たわっていた彼女を見た時、心臓が止まりそうになった。
「犯人はその悪い付き合いの連中だって分かっていたんだけど、親が有力者かなんかで誰も捕まるなんてなかった」
「うん」
「そしたら彼が、」
どこをどうしたらこんな結末にならなかったのか。
今でも答えが見つからない。
「その柄の悪い連中を見つけ出して襲ったの」
あの子のことは新聞にも乗らなかったのに、彼のことは少年Aとして大きな見出しにもなった。
人生は不平等。
その後の話も救いがなかったから、余計に。
「主犯格の男は少し怪我をするぐらいで終わった」
「うん」
「怪我なんてあの子と比べたらかすり傷レベルだったけど、主犯格の男の親が相当怒ってね。社会的に彼の家族も潰しにかかったの」
「うん」
「そしたら、彼の家族は…一家で、」
言葉が続かなかった。
でも充分に伝わったと思うので、ハッキリとは言わなかった。



