過つは彼の性、許すは我の心 壱


 だめだめ、思い出すな。


「だから2人から離れた」


 未だ癒えぬ傷がジクジクと痛み始めるまえに、話しに戻る。


「私がいなくても2人とも上手くいっているのかと思ってた。けど知らない内にあの子が悪い人と付き合い始めてね」

「うん」

「彼もあんなに好きだった部活も出ずに、毎日治安の悪いクラブまで行って止めようと頑張ったんだけどーー…事件が起きたの」


 唾を飲み込む。

 “あの時”みたいに携帯が震えている気がした。


「あの子が酷い暴行された姿で見つかったの。しかもあの綺麗な容姿が幻だったかの様な容姿にされて、生きていたのも奇跡だって」


 ベッドに横たわっていた彼女を見た時、心臓が止まりそうになった。

 
「犯人はその悪い付き合いの連中だって分かっていたんだけど、親が有力者かなんかで誰も捕まるなんてなかった」

「うん」

「そしたら彼が、」


 どこをどうしたらこんな結末にならなかったのか。

 今でも答えが見つからない。


「その柄の悪い連中を見つけ出して襲ったの」


 あの子のことは新聞にも乗らなかったのに、彼のことは少年Aとして大きな見出しにもなった。

 人生は不平等。

 その後の話も救いがなかったから、余計に。


「主犯格の男は少し怪我をするぐらいで終わった」

「うん」

「怪我なんてあの子と比べたらかすり傷レベルだったけど、主犯格の男の親が相当怒ってね。社会的に彼の家族も潰しにかかったの」

「うん」

「そしたら、彼の家族は…一家で、」


 言葉が続かなかった。

 でも充分に伝わったと思うので、ハッキリとは言わなかった。