「びっくりした」
夕暮れをバックに海に佇むあの子。
海風が吹き抜ける。
長くなったあの子の黒い髪がたなびき、彼女が微笑む。
海の女神様がふと、人間の前に現れて人間を誘おうとする。
そんな一枚絵みたいな光景。
「子供の頃って性別の差ってあんまり感じなかったじゃない?きっと彼もそうだったんだろうなって思った」
彼の頬の赤みは、きっと夕暮れのせいだけじゃなかった。
「ああ、好きになったんだなって」
私ですら眩しく感じた。
彼がいかほどの衝撃を受けたのかは分からない。
あの子が自分とは違う女性で、自分は男性で。
違いを認識した途端、何よりも魅力的な人物が傍にいることを思い出した。そんなところ。
過程が面白いほど分かったし、同時に私は失恋したのも分かった。
ただ、失恋のショック以上に感じてしまった“こと”があったけど、ここでは割愛。
「彼があの子を好きになって、2人は付き合い初めた。私は疎外感を感じちゃって、2人と話すことも減っていたの」
「うん」
「私みたいな平凡人間が、野球部のエースと学校一の美少女といるのが不釣り合いだなって思ったし、実際に言われたし、嫌がらせも散々された」
あの時は本当に辛かった。
虐めてくる女子の愉悦に塗れたあの顔。
その隣にはーーー…。
『ねえ分からない?』



