暖かな陽気が自分の身体を包み、絶妙な眠気を誘ってくる。
んー…あったかい。
窓から入る暖かな空気が春の訪れを知らせてくる。
4月中旬。まだ寒くてもおかしくない筈なのに、今日はやたらポカポカする。
眠気と戦いながら運んでいる教材をよっと抱え直した。
「ねえ昨日のテレビ見た?」
「見た〜」
「あの俳優超カッコよかったよね」
「ねー!」
「ほら1年きびきび動け!」
「ウッス!」
「そこ音外れてる!ヴァイオリン!」
「すみません!」
学校のあちこちから聞こえる声をBGMに、教材置き場に向かう。
はたまたは部活動に精を出す部員達、はたまたは帰りがけに面白かったテレビの話をする生徒達。
穏やかな様子に笑みが自然と溢れた。
ああ平凡だな。
…なんだかんだ、もう2年生か。
新幹線を乗り継いで来れる学校に入寮して、漸く2年目を迎えた。
地元はここに比べたら田舎だけど、学校もあったし、大きなショッピングモールもあったし、子供が遊びに行ける場所もあった。
犯罪も万引きぐらいで、大きな事件なんてない。
年齢が上がれば大体の人が顔見知りにもなるし、お隣の家庭事情もそこそこ筒抜け。
そういう田舎特有の雰囲気を嫌がって街から出ていく人もいたけど、私は長閑で、ゆったりとした空気が好きだった。
とびっきりかっこいい幼馴染がいて、2人が3人になって。
薄らと思い出される。