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バルコニーのテーブルには、いつものようにアフタヌーンティーの準備が整っていた。
シミ一つない真っ白なテーブルクロスが敷かれた丸テーブルには、三段のケーキスタンドと、それを挟んで二人分の皿とカトラリーが用意されている。
ケーキスタンドには、下から順に、ハムときゅうりのサンドイッチ、アールグレイのスコーン、それから、桃のタルトとドライフルーツのパウンドケーキが品よく並べられていた。
シオンはそれらを見て、嬉しそうに目を細める。
――シオンがエメラルド宮に居座り続けて二週間。
エリスは毎日こうしてお茶を用意し、振る舞ってくれる。
シオンが勉強している以外の時間は、こうして共に過ごしてくれる。
それはエリスからしたら当たり前のことだったが、シオンはそれがどうしようもなく嬉しかった。
「いつもありがとう、姉さん。僕は今、とても幸せだよ」
シオンが感謝を伝えると、エリスは、
「シオンったら、大袈裟なんだから」――と言って、柔らかに微笑むのだった。



