【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜


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 バルコニーのテーブルには、いつものようにアフタヌーンティーの準備が整っていた。

 シミ一つない真っ白なテーブルクロスが敷かれた丸テーブルには、三段のケーキスタンドと、それを挟んで二人分の皿とカトラリーが用意されている。

 ケーキスタンドには、下から順に、ハムときゅうりのサンドイッチ、アールグレイのスコーン、それから、桃のタルトとドライフルーツのパウンドケーキが品よく並べられていた。

 シオンはそれらを見て、嬉しそうに目を細める。


 ――シオンがエメラルド宮に居座り続けて二週間。

 エリスは毎日こうしてお茶を用意し、振る舞ってくれる。
 シオンが勉強している以外の時間は、こうして共に過ごしてくれる。

 それはエリスからしたら当たり前のことだったが、シオンはそれがどうしようもなく嬉しかった。

「いつもありがとう、姉さん。僕は今、とても幸せだよ」

 シオンが感謝を伝えると、エリスは、
「シオンったら、大袈裟なんだから」――と言って、柔らかに微笑むのだった。