本音を言えば、今すぐ寝台に連れ込みたいところである。
が、ここのところアレクシスは毎晩エリスを抱き続けており、この時間から事に及ぶのは流石に色々と憚られた。
かと言って、エリスと個室に二人きりになってしまえば、手を出さずにいられる自信はない。
となると、残る選択肢は二つ。使用人らの目のある場所で過ごすか、屋外に出るかである。
だがエリスは、そんなアレクシスの葛藤など全く素知らぬ様子でこう言ったのだ。
「散歩も良いのですけれど、その前に、部屋に来ていただけませんでしょうか」と。
アレクシスは目を見開く。
「……君の部屋に、か?」
「はい。もしくは、殿下のお部屋でも……」
「…………」
(これは、誘われていると思っていいのか?)
アレクシスは一瞬都合よく考えたものの、いいや、きっと違うのだろうと内心大きく首を振った。
エリスのことだ。もっと何かしら健全な理由があるに違いない。
アレクシスは邪念を追い払うように息を吐き、どうにか平静を取り繕う。
「では、着替えたら君の部屋に行こう。それでいいか?」
「……! はい、では、お部屋でお待ちしておりますね」
アレクシスの答えに、エリスはほっとしたように息を吐き、足早に去っていく。
そんなエリスの背中を、アレクシスはどうにも気まずい気持ちで見送るのだった。



