【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜


(よし、我ながら上出来だわ。マリアンヌ様はどうかしら)

 自分の刺繍に一区切りついたエリスは、マリアンヌの手元に視線を向ける。

 するとそこには、男物のグレーのハンカチに、黄色のふわふわとした小花を咲かせた、ミモザの刺繍が完成していた。
 葉っぱには濃い緑とシルバーグリーンの二種類の糸を使っており、色合いも申し分ない。
 贈り物(プレゼント)にしても、全く問題ない出来だろう。

(ミモザの花言葉は『友情』だけれど……この帝国で刺繍入りのハンカチを異性に贈ることは、特別な意味を持つのよね)
 
 ということはやはり、贈る相手は好いた男性に違いない、と確信を得たエリスは、「ミモザ、とても素敵ですわ。色合いなんて特に」と声をかける。

 するとマリアンヌは心底嬉しそうに、「エリス様のおかげよ。本当にありがとう」と微笑むので、エリスは尚のこと、マリアンヌの恋の成就を願わずにはいられなかった。