瞬間、エリスはハッと息を呑んだ。
『俺だけを見ていればいい』
と言ったその声が、あまりにも甘く、心地よく響いたからだ。
「……で……んか……?」
薄暗い部屋のベッドの上で、アレクシスの角ばった手のひらが、エリスの頬を優しく撫でる。
どこか乞う様な、熱情を含んだ眼差しで。
甘く絡みつくような声で、「エリス」――と、そう囁く。
「もう一度言う。君は、俺だけを見ていろ」
「……っ」
刹那、エリスは突如として、腹の奥が何かに突き上げられる様な、奇妙な感覚に襲われた。
それが、アレクシスに刻みつけられた身体の記憶だと気付くのに、さして時間はかからなかった。
途端、エリスはかあっと顔を赤らめて――といっても、暗い中では顔色を悟られることはないが――コクリと首を縦に振る。
するとアレクシスは唇にゆるりと弧を描き、満足げに呟いた。
「そうだ。それでいい」――と。
アレクシスは最早何も躊躇うことなく、溢れ出す熱情にまかせ、エリスの唇に深く口づけるのだった。



