「でも、いったいどうして……。もしや殿下は、理由をご存じなのですか?」
エリスは真剣な顔で問う。
するとアレクシスは、思い当たることがあると言った風に、ほんの一瞬視線を揺らした。
「理由か。……そうだな。大方予想はついているが、これは俺の口から言うことではない」
「そんな……! ここまで話しておいて、肝心なところは秘密だなんて……!」
「そう言うな。俺の考えとて、あくまで予想に過ぎないんだ。それに本人のいないところで秘密を話されては、シオンだっていい気はしないだろう?」
「ですが……」
シオンが父親を欺いてまでお金を集めなければならなかった理由。
それはきっと、自分を廃嫡しようと目論む父親に対抗するためだった。
万が一のときに困らぬよう、備えておく必要があったからだろう。
(最初はエリスと市井に下るために溜めたのかとも考えたが、そもそもエリスは王太子と婚約していたというからな。となると、あの金はあいつが自身のために溜めたもの)
つまり、シオンはそれほどまでに追い詰められていたと考えることもできる。
が、アレクシスは、それについてエリスに伝える気はさらさらなかった。
なぜならエリスは、父親がシオンを廃嫡しようとしている事実に、少しも気付いていないのだろうから。
(こんなところで、エリスにいらぬ心配を与える必要はない。シオンとて、同じ気持ちだろう)
アレクシスは、不満を漏らすエリスの顎をくいっと持ち上げ、諭すような声で続ける。
「あまり難しく考えるな。俺が言いたかったのは、君がシオンを心配しすぎる必要はないということだ。あいつは君が思っているよりも賢く優秀だし、今はもう君だけではなく、俺とセドリックもついている。…………だから君は、俺だけを見ていればいい」
「――!」
エリスは真剣な顔で問う。
するとアレクシスは、思い当たることがあると言った風に、ほんの一瞬視線を揺らした。
「理由か。……そうだな。大方予想はついているが、これは俺の口から言うことではない」
「そんな……! ここまで話しておいて、肝心なところは秘密だなんて……!」
「そう言うな。俺の考えとて、あくまで予想に過ぎないんだ。それに本人のいないところで秘密を話されては、シオンだっていい気はしないだろう?」
「ですが……」
シオンが父親を欺いてまでお金を集めなければならなかった理由。
それはきっと、自分を廃嫡しようと目論む父親に対抗するためだった。
万が一のときに困らぬよう、備えておく必要があったからだろう。
(最初はエリスと市井に下るために溜めたのかとも考えたが、そもそもエリスは王太子と婚約していたというからな。となると、あの金はあいつが自身のために溜めたもの)
つまり、シオンはそれほどまでに追い詰められていたと考えることもできる。
が、アレクシスは、それについてエリスに伝える気はさらさらなかった。
なぜならエリスは、父親がシオンを廃嫡しようとしている事実に、少しも気付いていないのだろうから。
(こんなところで、エリスにいらぬ心配を与える必要はない。シオンとて、同じ気持ちだろう)
アレクシスは、不満を漏らすエリスの顎をくいっと持ち上げ、諭すような声で続ける。
「あまり難しく考えるな。俺が言いたかったのは、君がシオンを心配しすぎる必要はないということだ。あいつは君が思っているよりも賢く優秀だし、今はもう君だけではなく、俺とセドリックもついている。…………だから君は、俺だけを見ていればいい」
「――!」



