質問の意図がわからず困惑顔のエリスに、アレクシスは「やはりな」と呟いた。
「それは間違いだ。シオンは少なくともここ六年、毎年次席を取っていた。つまり、君の実家に送られていた成績表は、シオンが学長に頼んで用意させた偽物だ」
「……っ」
突然語られた内容に、エリスは大きく目を見張る。
「そんな……偽物だなんて。それにあの子が次席だなんて、信じられませんわ」
「だが確かな事実だ。俺は実際の成績表を見たからな。それも、主席は王族に譲り、敢えての次席だ。次席までは学費が全額免除されるから、それで十分ということだったのだろう」
「学費の免除……? ですが父は、毎年学費を学園に振り込んでおりましたのよ。そのお金は、いったいどこに……」
「ああ。俺もそれが気になってセドリックに調べさせたら、シオンはその金を学園側から受け取り、投資していたことがわかった。投資先は金融業、建設業、造船業、金属加工業など多岐に渡るが、どれも有望な投資先ばかりだ。まさか貴族であるシオンに商才があったとは、恐れ入った」
「……そんな……あの子が……そんなことを」
エリスはいよいよ困惑を深める。
あの純粋で真面目なシオンが、学園を巻き込んで成績表を偽造し、浮いた学費で投資をしていたなどと言われても、まったくもって信じられなかった。
けれど、アレクシスが言うのだから間違いない。嘘をつく理由もないのだから。



