「殿下、あれは何ですか?」
「ああ、あれは『星灯り』と言って――」
◇
「殿下、こちらに並んでいるのは全て飴でしょうか? とても綺麗ですわ」
「星飴と言うんだ。砂糖細工だな。好きな色を選ぶといい」
◇
「殿下、これはどうでしょう? 流れ星ポップコーンだそうです」
「青と、紫だと……!? 凄い色だが、食べられるのか……?」
「どんな味か想像できませんわね」
「……悪いことは言わない。別のにしよう、エリス」
――といった調子で、二人は沢山の屋台を見て回った。
星屑ジュース、星空クレープ、願い星ランタン作り――どれも星祭りならではのものだ。
そうして一通り屋台を回ったところで、エリスは少し先の人だかりに気が付き、足を止める。
「殿下、向こうに人が集まっていますが、これから何かあるのですか?」
アレクシスが視線を向けると、そこには簡易的な舞台が設置されていた。
「ああ、あれは演劇だ。毎年、星まつりの起源となった神話をああやって舞台にするんだ。気になるなら観ていくか?」
「いいのですか? でも、殿下は退屈なのでは……」
「いいに決まっているだろう。それに、立ちっぱなしは良くないからな。少し休憩していこう」
そう言って、エリスを優しくエスコートするアレクシスの横顔には、エリスへの愛情が溢れている。
エリスは、そんなアレクシスの愛を深く噛みしめながら、「はい、殿下」と微笑んだ。



