エリスは、小さく首を縦に振る。意味なら分かっている、と。
すると、アレクシスは悩まし気に息を吐いた。
「君がどう思っているのかは知らないが、俺が君に飽きるはずがないだろう。俺はずっと我慢しているんだぞ。――今だって」
エリスをめちゃくちゃにしてしまいたい衝動を、必死に抑えている。
一度始めればもう、歯止めがきかなくなることがわかっているから。
「……理解してくれないか。俺は、君の身体の負担になることはしたくないんだ」
「でも、わたくしは殿下に我慢してほしくないのです。何より……わたくしが寂しいのです。殿下がいなかったひと月の間、殿下を思い出さない夜は一日たりとありませんでした。それでも、殿下は……」
「…………」
「殿下は、わたくしを――」
――抱いてくださらないのですか?
そう言いたげに見つめられ、アレクシスはごくりと息を呑む。
ここまでされて自制し続けられるほど、アレクシスは我慢強くなかった。
「本当にいいんだな? 途中で止めろと言われても無理だぞ」
「言いません。殿下こそ、途中で怖気づかないでくださいね?」
「――ハッ。俺を煽るつもりか? 後悔しても知らないからな」
アレクシスは挑発的に唇の端を上げ、そのままエリスに口づける。
深く、深く。互いの存在を確かめるような、熱い口づけを――。
二人の鼓動が重なり、息づかいが混じり合う。
こうして、二ヶ月ぶりの長い夜は、ゆっくりと更けていった。



