それはエリスの決死の告白だった。誘い文句だった。
 顔から火を噴きそうなほどの羞恥心を必死にやり込めて、エリスは、アレクシスの黄金色に揺れる瞳を覗き込む。

「それとも、殿下はもう、わたくしの身体に、飽きてしまわれたのですか?」
「……ッ」

 すると、その瞬間だった。

 今までエリスの真意を測りかねていたであろうアレクシスの瞳がギラリと揺らめき、獰猛(どうもう)な獅子のそれに変わったのは。


「……人の気も知らないで」

 と低い声で呟いて、アレクシスの下半身が一気に硬さを持つ。
 と同時に、背中にアレクシスの腕が伸びてきたと思ったら、気付いたときには天地が逆転していた。

 今まで自分の下にいた筈のアレクシスが、一瞬のうちに自分を上から見下ろしている状況に、エリスはかぁっと顔を赤く染める。

 そんなエリスを、尋問でも行うかの様に、鋭く見定めるアレクシス。

「君は、そんな台詞をいったいどこで覚えたんだ? 誰に教わった?」
「……あ。……そ、れは……」
「シオンか? それとも他の誰かか? 君はその言葉の意味を、ちゃんと理解しているんだろうな?」
「……っ」

 理解なら当然している。情報の出どころは以前読んだロマンス小説だが、その意味を理解できないほど、自分は純情(うぶ)なつもりはない。