「わたくしは、すぐに参加の返事を出しました。これで少しは、先のことを考えなくても済む。そう思ったからです。つまり今回の件は、殿下だけではなく、わたくしの未熟さが招いた結果。ですから決して、殿下おひとりが責を負う必要はないのです」
「……っ」
アレクシスはエリスの告白を、目を見開いて聞いていた。
まったく予想していなかった内容に動揺を隠すこともできず――茫然と問いかける。
「今も、そう思っているのか……? 俺が、君との子どもを喜ばないと」
アレクシスは正直、ショックを禁じえなかった。
エリスにそんな風に思われていたことも。エリスをそれほど不安にさせていたことも。
リアムとの一件のことなどすべて頭から吹き飛んでしまうほどの、強い衝撃を受けていた。
だが、エリスは首を振る。
アレクシスを真っすぐに見つめ、毅然と答える。
「いいえ、思っておりません。殿下は確かに喜んでくださいました。わたくしを大切に扱ってくださいました。ですからもう、不安はありません」
「なら、どうしてこの話を俺にした? 黙っていれば……」
「黙っていたら、殿下はいつまでもご自分を責められるのでしょう? それは、わたくしの望むところではありませんから」
「……っ」
この一週間、エリスは沢山考えた。
自分を避けるアレクシスを、どうしたら振り向かせられるだろうかと。
どうすれば、前の様に接してもらえるだろうかと。
その結論が、これだった。
こうしたやり方はどうかと思うけれど、シオンに言われずとも、エリスは最初から、そうしようと決めていた。
エリスは、アレクシスの胸板にそっと手を這わせ、誘うような声で問いかける。
「殿下は、このような未熟なわたくしでも、変わらず愛してくださいますか?」
「――!」



