【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜


 ◇



「――ん……」


 ――それからどれくらい経っただろう。

 暖炉のパチパチという音に瞼を開くと、そこは自分の寝室だった。
 灯りのない暗い部屋に、暖炉の炎だけが明るく揺らめいている。

「――!」
(やだ。わたしったら、いつの間に……)

 どうやら眠ってしまっていたようだ。
 庭園で、アレクシスに抱き抱えられたところまでは覚えているが、その後の記憶がない。

 エリスは咄嗟に身体を起こそうとした。
 けれどどういうわけか身体は微動だにせず、そこでエリスはようやく気付く。
 自分がベッドではなく、ソファの上――しかも、アレクシスの腕の中にいることに。

「……っ」
(これ、どういう状況なの……!?)

 エリスは驚きと戸惑いに息を呑んだ。
 背後から、アレクシスの腕ががっちりと腰をホールドしていたからだ。

「あ……、あの、殿下……?」

 エリスは声をかけてみるが、反応はない。
 きっと、アレクシスも眠っているのだろう。

 だがそれも無理はない。
 アレクシスはここのところ、ずっと忙しくしていたのだから。

(お忙しい殿下が、わざわざ早く帰ってきたんだもの。きっと大事な話があったはずよ。それなのに寝てしまうなんて……)

 意識がはっきりするにつれ、申し訳なさが募っていく。
 こんなことなら、庭園で話を聞いておくべきだった――そんな風に。