アレクシスは一週間前、リアムとオリビアを見送った直後、クロヴィスから声を掛けられた。
「ルクレール侯の対応は私に任せてもらえるか? 彼に用があってな」
「用、ですか?」
「これとは別件で、問いたださなければならないことがある」
「――!」
それを聞いて、アレクシスは確信した。
やはり、クロヴィスの狙いはルクレール侯爵だったのだ、と。
そうでなければ、いくらクロヴィスとはいえ、たった二日や三日でリアムの情報を集めることなどできやしないのだから。
(兄上は、前々からルクレール侯爵に関することを調べていたのだろう。それであの調査書を……)
となると、ここは兄に譲る他ない。
そもそも、ルクレール侯爵は先々代の頃から三代に渡って議会の議長を務め、政治、経済、どちらにも絶大な影響力を誇る大貴族。
ジークフリートには、「ルクレール侯爵のことは俺がどうにかする」と言い切ったものの、セドリックの力を借りたとしても手に余るかもしれない――そう思う程度には、アレクシスはルクレール侯爵を厄介な相手だと認識していた。
『決闘中に命を落としたリアムと、そんな兄を追って自死を選んだオリビア』――二人に見立てた遺体を多くの人間に目撃させ、買収した医者に死亡診断書を書かせて二人の死を既成事実にしたとしても、ルクレール侯爵の手にかかれば簡単に覆えされてしまうだろうと。
そのリスクと天秤にかけた結果、アレクシスはクロヴィスに一任することを決めたのだ。



