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一方その頃、アレクシスは宮廷内の執務室にて、セドリックと共に書類を捌いているところだった。
(あと数日はかかるかと思ったが、今日中にはどうにかなりそうだな)
執務卓には、目を通さなければならない資料や、機密事項と印の入った分厚い封筒がまだいくつも積まれているが、急ぎ裁可を下さなければならない稟議書類は残りわずか。
アレクシスは、それらの書類をパラパラと捲りながら、安堵の息を吐く。
二人は連日、決闘の為にさぼってしまった仕事の遅れを取り戻すため、普段より二時間早く宮廷に上がり、夜遅くまで仕事をしていた。
決闘の後始末に加え、予定を繰り越していた軍法会議や他国の軍事関係者との面会など、かなり慌ただしい一週間だったが、無事乗り切れたのはセドリックのおかげと言えよう。
セドリックは、演習から戻った翌日から決闘が行われるまでの一週間の間、夕方には帰宮してしまうアレクシスに代わり、出来うる限りの仕事を終わらせてくれていたのだから。
――それに。
「…………」
アレクシスは手にしていた書類の束を机に置くと、右の一番上の引き出しを開け、A4サイズの茶封筒を取り出す。
それは一見何の変哲もない封筒だが、中に入っているのは、リアムについての調査報告書だった。
(もう、一週間になるのか)
アレクシスがこの書類を受け取ったのは、決闘前日の朝のこと。
エリスとの夕食を経て、アレクシスがリアムについての処遇を考え直し始めていたところ、セドリックからこの茶封筒を渡されたのだ。
「殿下が心変わりをしたら、渡すつもりで調べておりました。無駄にならなくて良かったです」と。
そこには、リアムの生い立ちについて事細かに記されていた。
ルクレール家に引き取られてから、リアムが父親からどのような暴力を受けてきたのか。執事や昔の使用人たちの証言や、病院の診察記録。
他にも、死んだ実の母親のことや、育った孤児院の名前と住所。それに、その孤児院が火事で焼け落ちたときの当時の記録と、それから……。



