(殿下がお優しいのはわかるけれど、ここまで気を遣われると、逆に居心地が悪いのよね。でも、わたしにそんなことを言う資格がないのは、わかってる)
エリスは一週間前、夢に見たあの場面の直後、ショックのあまり気を失ってしまったのだ。
シオンが咄嗟に身体を支えてくれて大事には至らず、幸い三十秒ほどで意識を取り戻したから良かったものの、その場にいた全員に心配をかけてしまった。
その後すぐに、アレクシスの言い放った『死』の意味が誤解だったとわかり、どれだけホッとしたことか。
けれど、そんなエリスの中に芽生えた次の感情は、自己嫌悪だった。
(結局わたしは、最後まで殿下を信じることができなかった。本心ではずっと、殿下のことを疑っていたんだわ。……きっと、今も)
わかっている。こんな気持ちになるのは、自分の心が弱いせいだと。
それに今回の一件について、アレクシスは「全て俺の責任だ」と言ったが、エリスは、少なからず自分にも原因はあったのだと、強く自覚していた。
(殿下に、ちゃんと気持ちをお伝えしなきゃ。……この子のためにも)
エリスは下腹部にそっと両手を当て、決意する。
そしてようやく顔を上げると、窓の向こうの晴れ渡る空を見上げ、目を細めた。
「お二人は、そろそろあちらに着いたころかしら……」



