「――ッ!」

 瞬間、アレクシスはハッと理性を覚醒させた。
 そして絶句した。

 本能のまま振り下ろし始めた自身の剣の前に、オリビアが立ちふさがっていたからだ。

 先ほど剣を弾いたときの衝撃で、尻もちをついたリアムを庇う様にして、仁王立ちで自分を睨みつけるオリビア。
 その姿に、アレクシスの背筋が凍りつく。


 ――ああ、不味い。

 このままではオリビアを斬ってしまう。
 かと言って、今さら振り下ろした剣をどうにかできるわけもなく。


(――くそッ!)

 アレクシスは、突然飛び込んできたオリビアに強い怒りを覚えながらも、少しでも剣の軌道を逸らそうと、身体の重心を後ろにずらす。

 と同時に、理性を取り戻した頭で、リアムの表情をしっかりと捉えていた。

 妹の背中を瞳に映し、こちらを呆然と見上げるリアムの姿を。
 完全に戦意を喪失し、最愛の妹に迫りくる『死』に恐れを抱く、絶望に染まったその顔を。



 そして、次の瞬間――。