「聞け、リアム! お前が死んでもルクレール侯は困らない! 分家から養子を迎えるか、第二、第三のお前を用意するだけだ!」
「だったらどうしろと言うんだ! 屈辱に堪えながらこの先も生きろと!?」
「違う! 最後まで戦えと言っているんだ! 死は決して救いではない、軍人たるお前はよく知っているはずだ! 残される者の気持ちを考えろ!」
「オリビアだと? お前がその名を口にするな――!」
全身から怒りを迸らせ、リアムはアレクシスの剣を力任せに押し返す。
その力は、かつてリアムと対戦した試合からは想像もできないほどの強さだった。
「――ッ!」
(こいつ、まだこんな力が……! それにこの殺気――、死にたいのか!)
事実、リアムが死を望んでいるのは間違いない。
だがそうと分かっていても、心の中で叫んでしまう。
(その殺気を今すぐ収めろ!)
と。
試合開始から五分余り。
アレクシスは、リアムを斬り殺してしまわないようにするのに必死だった。
リアムが強い殺気を放つ度、本能的に反応しかける右腕を止めることに、神経をすり減らしていた。
――そもそも、アレクシスはこの試合に『峰打ち』で勝利するつもりでいた。
寸止めは通用しない。怪我もできる限り負わせたくない。
そう考えたとき、勝利する最も確実な方法は『峰打ち』しかないと。
とはいえ、リアムは簡単に背後を取らせてくれるほど弱くはない。
ならば、ある程度体力を削ってやればいい。アレクシスはそう考えていた。
そのための五分のつもりだった。
けれどリアムは未だ勢いの衰えを見せず、しかもやたらと殺気を放ってくる。
アレクシスはそれが、煩わしくて仕方なかった。
(怪我をさせないことが、これほど難しいとはな)
その上、雨まで降ってくる始末。――正直、気分は最悪だ。
アレクシスは次々に繰り出されるリアムの剣撃を受け流しながら、苛立ちに顔をしかめる。



