――そう。
それは決闘が始まる前、アレクシスに声援を送った後のこと。
エリスは、時間ぎりぎりになってようやく二階席に姿を現したクロヴィスから、こう言われた。
「今の声援、聞かせてもらった。私も弟に激励を送るつもりでいたのだが、必要なくなってしまったな」と。
更に、このように告げられた。
「実はここだけの話、私は今日の決闘を不安に思っていたんだ。弟が友を殺めてしまうのではとな。――だが、君のおかげで考えを改めたようだ。きっと悪い結果にはならないだろう。弟を信じて、どうか見守ってやってほしい」
その言葉を聞いたエリスは、正直驚いた。
驚きのあまり、言葉を返すのをすっかり忘れてしまったほどだった。
エリスは、アレクシスとクロヴィスの仲が悪いと思っていたからだ。
それなのに、クロヴィスのアレクシスを見る目は、予想と違い、弟を案じている。
それを、エリスはとても意外に思ったのだ。
――そもそも、エリスがクロヴィスとまともに言葉を交わしたのは今日が初めてのこと。
結婚式でも、宮廷舞踏会でも、建国祭の式典でも、クロヴィスと挨拶以上に関わることはなかった。
それはアレクシスが、エリスがクロヴィスと交流することを嫌がったからだ。
シオンがこの帝国に留学することが決まったときだって、「クロヴィス殿下に直接お礼を伝えたい」と申し出たエリスに、アレクシスは、「礼なら俺から伝えておく。君が気にする必要はない」と不機嫌に返すだけだった。



