確かにアレクシスはここ二日、まともにエリスと会話できないでいた。
それは、『リアムを許してあげてほしい』というエリスの願いを、すぐには受け入れられなかったからだ。
『俺はリアムを許すことはできない』――そんな言葉でエリスを突き放してしまったことに、負い目を感じていたからだ。
「……わかっている。俺の態度が、エリスを不安にしていることは。――だが」
そのときの言葉は紛れもなく自分の本心であったし、その考えは今とて変わらない。
リアムに対する怒りの炎は未だ大きく、この先も完全に消え去ることはないだろう。
たとえ決闘の末の決断が、客観的に『リアムを許す選択』であったとしても、それイコール、『リアムを許した』ということにはならないのだから。
それに、だ。
「まだ結果は出ていないんだ。すべてはリアムとオリビア次第。どんな結末を迎えるかは終わってみるまでわからない。……俺はエリスにぬか喜びをさせたくないんだ。わかるだろう?」
「ええ、理解できます。ですが、ときには結果よりも過程が大切なこともあると、私は思いますよ」
「…………」
「まぁ、無理にとは言いません。そもそも手を振るというのは例えですから。クロヴィス殿下ならともかく、殿下には似合いませんしね」
「……お前な」
――こんなときに冗談か?
アレクシスは溜め息をつきながら、それでも、一応セドリックの忠告を受け入れたのか、エリスの方に視線を向ける。
手を振るのはナシとしても、目くらいは合わせておくべきだろうと。
すると、その瞬間だった。
アレクシスが顔を上げると同時に、待ちわびていたかのようなエリスとしっかり目が合って――。
「で……、んか……っ!!」
と、地上からでもはっきりと聞き取れるほど、大きな声で名前を呼ばれたと思った、次の瞬間。
「殿下の勝利を、お祈りしております……っ!」
――恥ずかしさからか、顔を真っ赤に染め上げた愛らしいエリスの姿が、アレクシスの瞳に飛び込んできたのは。



