――本当は、全ての不安が払拭されたわけではない。
シオンにいくら励まされようと、マリアンヌが心配してくれようと、アレクシスをいつも通り見送ることのできなかった後悔は消えはしない。
けれど、過ぎたことをいくら後悔しても仕方がないということを、エリスはちゃんと理解していた。
今自分ができるのは、アレクシスを信じることだけである、と。
するとマリアンヌは、エリスのそんな気持ちを見透かしたのか、そっと手を取る。
「大丈夫よ。ああ見えて、お兄さまには情け深いところがあるの。こんなことになってしまったけれど、ルクレール卿はお兄さまの数少ない友人ですもの。きっと、すべて丸く収まりますわ」
そう言って、エリスの視線を誘導するように闘技場を見下ろした。
それに釣られたエリスの瞳がアレクシスの姿を捉えたことを確認し、このように付け足す。
「それに、声援なら今からでも間に合いますわよ。声をかけてみてはいかが? きっと、お兄さまも喜びますわ」



