「――だが、これだけはわかってくれないか。俺はただ、君の心身にこれ以上負担をかけたくなかっただけなんだ。俺がリアムと決闘することを知れば、君は自分を責めるだろうと思った。そんな必要はないと伝えたところで、君はきっと納得しないだろうと。そしてその考えは間違っていなかったと、俺は今確信している。……どうだ、違うか?」
「…………」
――違わない。
全くもってその通りだ。
エリスは昼間、シオンからリアムやオリビアのことを聞かされて、たった数時間の間にとても悩んだ。
自分に隙があったせいでこんなことになってしまったのではと。
アレクシスにその尻ぬぐいをさせてしまっているのではと、自分を責めた。
だが、エリスはそれ以上に、アレクシスが自分を守ろうとしてくれていることを知っていた。
アレクシスの優しさを、自分に対する愛情を、十二分に理解していた。
だからこそエリスは決意したのだ。アレクシスに、ありのままの気持ちを伝えようと。
「わたくし、殿下のお気持ちは理解しているつもりです。殿下はわたくしを守るために、リアム様との決闘の件を内緒にしてくださっていたのだと……。殿下がこの件について、わたくしに口を出されたくないことも……すべて承知の上で、それでも、殿下にお伝えしたいのです。聞いていただけますか?」
エリスが尋ねると、アレクシスはピクリと眉を震わせて、ほんの一瞬、厳しい表情を見せる。
だが彼は、エリスの言葉を少しも否定することなく、頷いた。
「ああ、勿論だ。聞こう」と。
それを受けたエリスは、言葉を選ぶようにして、慎重に口を開く。
「実は今日の正午頃、シオンとオリビア様が訪れたのです」



