「……変わり……は……その……」
「何だ? 何かあったのか? 使用人からは何の報告も受けていないが」
「……! それは、『わたくしから話すから、言わないように』と口留めしたのです。ですから、どうか彼らを責めないでください」
「…………。それはつまり、口留めしなければならないようなことが起きた、ということか?」
「……はい。その通りですわ、殿下」
「――!」
酷く言いにくそうな顔で、けれど、言わなければという強い決意を込めて自分を見上げるエリスの瞳に、アレクシスの勘が警鐘を鳴らす。
――ああ、もしやこれは、と。
「少し早いですが、夕食の準備を整えましたので……その……、お食事が終わったら、わたくしにお時間をいただけませんか? 大切なお話がありますの」
「…………」
――『大切な話』。
アレクシスの記憶のある限り、そう言われて良い話だった試しがない。
しかもこのタイミングとくれば、『リアムとの一件』以外にはないだろう。
(エリスはどこまで知っている? まさか、決闘の件が漏れたのか? いったい誰から……)
「……あの、殿下?」
「――あ、ああ。……そうか、……話だな。わかった」
アレクシスは内心焦りを浮かべながら、どうにかこうにか返事を返す。
そうして、一旦その場を切り抜けようと、「着替えてくる」と言い残し、逃げるようにその場を後にした。



