この五日間、アレクシスもセドリックも、シオンについて何一つ教えてはくれなかった。
エリスが自分から聞かなかったというのもあるだろうが、シオンについてだけではなく、リアムのことやオリビアのこと、そして、エリスの不名誉な噂について今後どのような対応をするのかということさえ、アレクシスは話そうとしなかった。
エリスはアレクシスのその心を、自分を守ろうとするが故だと理解していた。
「君は何も心配せずに、自分の身体のことだけを考えて過ごしてくれ」
――と、ひと月ぶりに再会した五日前の夜、寝台で囁いてくれた言葉の通りに。
だが、そのときは何の疑いもなく頷いたエリスも、時間が経つにつれ、違和感を覚えるようになった。
アレクシスを疑うつもりはないし、彼の愛は信じている。
けれど、本当に自分は何も知らないままでいいのだろうかと、守られているだけでいいのかと、そんな疑問を抱くようになった。
(わかっているわ。殿下はわたしが『知る』ことを望んでいない。それがわたしを守るためだということも、理解はしているつもりよ。……だけど)
『宮の外には出ないでくれ』というアレクシスの言いつけを破るつもりはない。
『シオンの出入りを禁じる』との決め事に、不満を述べるつもりもない。
この先アレクシスが諸々の事件についてどんな決定を下そうと、理解し、受け入れるつもりでいる。
それがアレクシスの愛だと信じているから。
しかし、それでも。
いや、だからこそ、秘密や隠し事はしないでほしいと思ってしまう。
アレクシスが何を考えて、どうしたいのか、その心だけでも教えてほしいと、知りたいと願ってしまう。
守られるだけではなく、アレクシスの心を理解し、共に悩み、支えたいと。
そう思うのは、自分の我儘だろうか――。



