【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜



 ◆


 ――「しばらく、宮の外には出ないでくれないか」

 アレクシスからそう言われたのは、五日前、演習から戻ったアレクシスと再会した、その日の夜のことだった。

 入浴後の眠りから覚めたエリスは、その後宮廷から戻ったアレクシスに、このように告げられた。

「俺のいない間に、また今回のようなことが起きたら困る。まして君は妊娠している身だ。この件が全て片付くまでは、宮内で過ごしてほしい」と。

「…………」

(この件、というのは、わたしの噂のことよね。つまり、噂が完全に鎮火するまで大人しくしていろ、という意味かしら……)

 決闘のことを知らされていないエリスは、アレクシスの言葉に少々の疑問を持ったが、懇願するようなアレクシスの表情を見て、頷かないわけにはいかなかった。

 それに、そもそもリアムとの一件は、「俺が戻るまで大人しくしていろ」とのアレクシスの言葉を守らなかった自分に責任がある。

 エリスはそのように考えていたため、アレクシスがそれで安心できるなら、と素直に従ったのだ。