――知れば悩む。
セドリックは、それこそがアレクシスの本音なのだろうと悟った。
リアムがしたことと言えば、結果的に、エリスの不義の噂を流しただけ。だが、それだって何の証拠も残っていない。
そんな状況で決闘が行われることを知れば、エリスは間違いなく自分を責めるだろう。
自分がきっかけで、リアムの命を奪ってしまうことになるかもしれない、と。
アレクシスは、それを危惧しているのだ。
とはいえ、決闘の事実を内緒にするというのは、それ以上の悪手に思えた。
「お言葉ですが、殿下。そのやり方は、将来に渡って禍根を残すことになるかと。今回のような重要な件を秘密にするというのは、信頼を大きく損う原因になりかねません」
「それでも、だ。エリスがこの件を知るのは、全てが終わった後でいい」
「…………」
「そもそも、決闘とは互いの命と名誉を賭けて行うもの。リアムが俺を殺す気でくれば、俺も手加減はできん。お前だって、エリスに血を見せたくはないだろう?」
「……それは、当然です」
渋々ながら納得を見せるセドリックを横目に、アレクシスはソファから立ち上がる。
「着替えを済ませたらすぐに宮廷に上がるぞ。兄上に立会人を頼まなければな」
そう言いながら寝室へ続く扉のドアノブに手をかけて、「ああ、そうだ」と付け加えるアレクシス。
「俺の着替えが終わるまでに、一週間、何があろうとエリスを宮の外に出さないよう使用人に言い含めておけ。それと、決闘の事実を知るシオンを決して宮には入れぬようにと。手紙のやり取りも禁止だ。わかったな?」
「……承知しました」
セドリックは、有無を言わさぬアレクシスの命令を受け入れるほかなく――アレクシスが寝室の中に入っていくのを見届けて――静かに執務室を後にした。



