――決闘。
その言葉に、アレクシスはピクリと眉を震わせる。
アレクシスはリアムの屋敷を出る際、リアムから決闘を申し込まれた。
「君が勝てば私の命をくれてやる。煮るなり焼くなり好きにするがいい。だが私が勝利した暁には、我が願いを叶えてもらう」と。
(……願い、だと?)
アレクシスは不審に思ったが、けれど、怒りに駆られていたそのときのアレクシスには好都合であったし、万に一つも負ける気はしない。
それに、売られた喧嘩を買わない選択肢は、アレクシスの中には存在しなかった。
だから、アレクシスは迷わず答えたのだ。
「いいだろう」と。
とはいえ、正式な決闘には立会人が必要である。
それも、決闘の正当性を証明するために、立会人は当事者と同等かそれ以上の身分の者とされている。
アレクシスは皇族なため、立会人は皇族や王族でなければならない。
すぐには立会人の用意ができないため、決闘の日付は一週間後ということで話がまとまっていた。
――その話を聞いたオリビアが行くところといえば、自分の屋敷しかない。
オリビアはきっと、リアムの無謀な行動を止めようとでも考えたのだ。
一度成立した決闘の約束は、何があろうと無効になることはないというのに。
(シオンが付いていったとは……面倒なことにならなければいいが)
はぁ、と煩わし気な溜め息をつくアレクシスに、セドリックは問いかける。
「ところで、エリス様に決闘の件を――」
お話されましたか、と言いかけて、セドリックは口を噤んだ。
アレクシスの眼光が、恐ろしく鋭くなったからだ。
身動きもできなくなりそうなほどの眼差しに、セドリックは息を呑む。
「エリスには話さない。言えば止めようとするだろうからな」
「……ですが内緒にしたところで、遅かれ早かれわかることです」
「そんなことはわかっている。だが、これはもう決まったことだ。誰にも覆すことのできない決定に口を挟まれたくはない。それに、知ればエリスは悩むだろう」
「…………」



