――そう。アレクシスが今最も気になっているのは、オリビアのことだった。
そもそもアレクシスは――ホテルからの帰りの馬車の中で――エリスからオリビアのことを聞かされるまで、オリビアがホテルにいたことを知らなかった。
オリビアがリアムを尾行していたことも、図書館でエリスがリアムに休憩室に連れ込まれた際、真っ先にオリビアが駆けつけてくれたことも、エリスから聞いて初めて知ったのだ。
「オリビア様は、わたくしが皇子妃であると気付いていらっしゃいました。お茶会で商家の夫人だと嘘をついたわたくしを少しも責めることなく……助けてくださったのです」
アレクシスはエリスからそう告げられたとき、態度にこそ出さなかったが、内心では大いに混乱した。
「オリビアは、君に何かを要求しなかったか?」
と尋ねてしまうくらいには、自分の知っているオリビアとの違いに困惑した。
その違和感は、
「まさか、要求などと。オリビア様は、わたくしに誠心誠意謝罪してくださいました。ご自身には、何一つ非はないというのに」
とのエリスの答えに、益々大きくなるばかりだった。
だから、そんなオリビアがセドリックにどんな態度を取ったのか、何を語ったのか、どうしても気になったのだ。
「お前から見て、オリビアはどうだった?」
アレクシスは問いかける。
すると、セドリックから返ってきたのは――。
「それが……出ていってしまわれて」
「出ていった?」
「申し訳ありません、私の不手際です。オリビア様が部屋の奥にいらっしゃることに気が付かず、私は『リアム様との決闘』の件を口にしてしまったのです。オリビア様はそれを聞いていらしたようで、部屋を飛び出していってしまわれて。シオンがすぐに追いかけたのですが……結局ふたりとも、戻ってはきませんでした」
「…………」



