◇◇◇
「――さん、……姉さん!」
「――!」
瞬間、窓から朝の帝都の街並みを眺めていたはずのエリスは、名前を呼ばれて我に返った。
どうやら考え事をしてしまっていたようだ――そう思いながら背後を振り向くと、先ほどまではなかったはずのシオンの姿がある。
「……シオン」
いつの間に入ってきたのだろうか。
驚くエリスに、シオンは心配そうな、それでいて、かつてないほど穏やかな視線を向けた。
「姉さん、やっぱり寝不足なんじゃない? ごめんね。僕がずっと手を握ってたから、寝にくかったよね?」
「――!」
その言葉に、エリスはカァッと顔を赤く染める。
「……い、いえ。それはいいのよ。そもそもはわたしが言い出したことだし……それに、幼い頃のあなたを思い出して……その……」
「フフッ。いいよ、最後まで言わなくて。姉さんが僕を大切に思ってくれていることは、十分伝わったから」
「……っ」
――そう。
昨晩エリスは、シオンと共に一夜を過ごした。
と言っても、いかがわしいことは一切なく、同じベッドで眠っただけであるが。
経緯としては、一通りの話を終え「そろそろ部屋に戻るね」と潔く席を立とうとしたシオンを、エリスが引き留めた形だ。
「今夜はここにいて。あなたともっと話をしたいの」
と、懇願するような声で言われたシオンは、驚いたような、呆れたような顔でしばらく躊躇っていた。
けれど最終的には、「姉さんがそう言うなら」と、部屋に残ることを決めた。
エリスは、幼い頃そうしていたように、シオンの手を握り、ベッドの上で懐かしい思い出を語った。
生前、母親が読み聞かせてくれた絵本のこと。
飼っていたカナリアのこと。
使用人にいたずらをして怒られたこと。
そして、シオンが屋敷からいなくなってからの、心細かった日々の記憶を――。
「――さん、……姉さん!」
「――!」
瞬間、窓から朝の帝都の街並みを眺めていたはずのエリスは、名前を呼ばれて我に返った。
どうやら考え事をしてしまっていたようだ――そう思いながら背後を振り向くと、先ほどまではなかったはずのシオンの姿がある。
「……シオン」
いつの間に入ってきたのだろうか。
驚くエリスに、シオンは心配そうな、それでいて、かつてないほど穏やかな視線を向けた。
「姉さん、やっぱり寝不足なんじゃない? ごめんね。僕がずっと手を握ってたから、寝にくかったよね?」
「――!」
その言葉に、エリスはカァッと顔を赤く染める。
「……い、いえ。それはいいのよ。そもそもはわたしが言い出したことだし……それに、幼い頃のあなたを思い出して……その……」
「フフッ。いいよ、最後まで言わなくて。姉さんが僕を大切に思ってくれていることは、十分伝わったから」
「……っ」
――そう。
昨晩エリスは、シオンと共に一夜を過ごした。
と言っても、いかがわしいことは一切なく、同じベッドで眠っただけであるが。
経緯としては、一通りの話を終え「そろそろ部屋に戻るね」と潔く席を立とうとしたシオンを、エリスが引き留めた形だ。
「今夜はここにいて。あなたともっと話をしたいの」
と、懇願するような声で言われたシオンは、驚いたような、呆れたような顔でしばらく躊躇っていた。
けれど最終的には、「姉さんがそう言うなら」と、部屋に残ることを決めた。
エリスは、幼い頃そうしていたように、シオンの手を握り、ベッドの上で懐かしい思い出を語った。
生前、母親が読み聞かせてくれた絵本のこと。
飼っていたカナリアのこと。
使用人にいたずらをして怒られたこと。
そして、シオンが屋敷からいなくなってからの、心細かった日々の記憶を――。



