それは自白以外の何ものでもなかった。

 焦りも後悔も、反省の色一つ映さない。
 どころか、アレクシスの反応を(たの)しむように見据える、かつての友。

『理由などそれで十分だ』と下卑(げひ)た笑みを浮かべるリアムは、アレクシスの記憶の中のリアムとは、もはや別人だった。


「……リアム、――貴様、本当に……」


 信じられなかった。信じたくなかった。

 何かの間違いであってくれればと思った。

 一刻も早く犯人を捕らえ、エリスの居場所を突き止めねばと思う反面、リアムではない別の誰かの仕業であってくれたらと願っていた。

 もしもリアムの仕業であろうとも、リアムの心に自責の念が、あるいは、反省の色を少しでも見せるのなら、たとえ許せずとも、話し合うつもりでいた。

 それが、自身の身勝手な気持ちで突き放してしまった友人にできる、唯一の贖罪だと思っていたから。


 だが、そのわずかな希望はたった今消えてなくなった。
 リアムは明確な悪意を持ってエリスに手を出したのだと――そう、悟ってしまったからだ。


(確かに、こいつにはこいつなりの理由があったのだろう。――だが)


 日の光の閉ざされた部屋で、アレクシスはリアムを睨みつける。


「つまり、お前は認めるんだな? エリスについてあらぬ噂を流し、彼女を個室に連れ込んだと」

「ああ、認めよう。エリス妃の不貞(・・)の噂を流し、彼女を薬で眠らせ個室に連れ込んだのはこの私だ。全ては、噂を真実(・・・・)にするために(・・・・・・)な……!」

「――ッ!」


 瞬間、アレクシスの中で、プツリ――と、何かが途切れる音がした。

 それは、必死に抑えていたリアムへの殺意が、理性を飲み込んだ瞬間だった。


 ――この男を、殺さねば、と。


 右手が無意識に腰へと伸びる。

 鞘に納められていた剣身が姿を現し――その切っ先が、大きく天を仰いだ。


 だが――アレクシスが剣を振り下ろした、その瞬間。


「いけません、殿下ッ!」


 ――と叫び声が聞こえ、リアムの首筋を捉えるはずだった自身の剣が、セドリックによって、寸でのところで止められていた。