【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜


 アレクシスは、しらばっくれるリアムの前に、一通の手紙を突き付ける。

「質問を変える。これはお前がエリスに送った手紙だ。中は全て読ませてもらった。その上で問う。なぜお前はオリビアとエリスを引き合わせた。いったいどんな目的で」

 アレクシスの妃であるエリスを、その座を狙っていたオリビアの友人として招く。
 これはあまりにも不可解な行動だ。何か裏があると考えるのは当然だろう。

 それに、だ。

「セドリックから、オリビアの結婚については報告を受けている。俺が負わせた火傷のせいで、望まぬ婚姻を結ばねばならなくなったとな。そのせいで、お前は俺を恨んでいるのだろう。全てはそれが原因なのか?」

 アレクシスがこう続けると、ようやくリアムは反応を見せた。

 リアムは再び白く長い息を吐き出すと、出窓から立ち上がり、テーブルの灰皿にタバコの火を押し付ける。

 そうして、呆れたように微笑んだ。

「なるほど。つまり殿下は、私が殿下を憎むあまりエリス妃に近付き、彼女にまつわる『何らかの噂』を流したと、そう言いたいのですね?」
「そうだ。だがそれだけではない。お前は昨日、図書館でエリスと会っただろう。そのとき、お前はエリスに何をした?」
「…………」
「お前がエリスを休憩室に連れ込んだという裏は取れている。言い逃れをしようなどとは思うな」

 実際は裏など取れていないが、今のアレクシスにとって、そんなことは問題ではなかった。

 嘘でもはったりでも、どんな手段を使おうと、リアムから自白を取らねばならない。


「答えろ、リアム。――エリスは、今どこにいる」