【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜


 エリスの部屋で見つけたリアムからの手紙。
 それはお茶会の招待状だった。

 遠方に嫁ぐ不憫なオリビアの友人になってやってほしい、と書かれたその続きには、エリスとしてではなく、商家の夫人エルサとして、と記されていた。

 そこからわかったのは、エリスはリアムから招待状を受ける以前に、別人としてリアムとオリビアに接触していたということ。

 さらに文面冒頭に『お加減はいかがでしょうか』とエリスの身体を心配する文言があったことから、エリスはリアムに、妊娠にまつわる体調不良のことを知られているのだろうと推測できた。

 加えて、エメラルド宮の使用人たちから、お茶会当日、エリスがシオンと二人、行き先を告げずに辻馬車で出かけた裏も取れている。

 あくまで状況証拠でしかないが、このひと月、エリスが個人的に接触したのがリアムとオリビアだけだというのなら、この二人のうちのどちらか、あるいは両方が、噂に関わっていると考えるのは至って自然。

 それに図書館司書は、昨日の昼間、倒れたエリスを介抱したのは『茶髪の長身。若い男』だったと証言した。
 茶髪の長身など腐るほどいるが、これはリアムの外見に一致するし、貴族専用の雑談スペースに入れるのは貴族だけ。
 リアムの肖像画を見せれば、本人かどうかはすぐに確認が取れるだろう。