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アレクシスはほんの今しがた、予定より三日早く、セドリックと共に演習先から帰還したばかりだった。
エリスの顔を一目見ておこうと、宮廷に諸々の報告を上げるよりも前に、直接エメラルド宮に帰ってきたのだ。
けれど、宮に戻ったアレクシスを待っていたのはエリスの出迎えではなく、慌てふためく使用人たちの姿。
「どうする。王宮に報告した方がいいんじゃないのか?」
「でも、この手紙には内密にって……」
「だが、本当にシオン様からの手紙かわからないだろう! もしエリス様に何かあったら、俺たち全員首どころじゃ済まないぞ!」
「ああ、ここに殿下がいらっしゃれば……」
アレクシスは、自分の存在にすら気付かないほど深刻な空気の使用人たちに、ただ事ではないことを悟った。
その理由を知るべく、「これはいったい何の騒ぎた?」と尋ねたところ、ようやく主人の存在に気が付いた使用人たちから冒頭の説明を受け、更に、このように伝えられた。
「実は、エリス様のお腹には、殿下のお子がいらっしゃるのです」と。



