瞬間、エリスは頭を強く殴られた気がした。

『そういう気の引き方は、僕は好きじゃない』

 シオンにそんな言葉を言わせてしまった自分自身に、心底腹が立った。

(シオンにこんな顔をさせてまで、わたしはいったい何を悩んでいるのかしら。答えなど、とうに決まっているというのに)


 そもそも、今回のことは全て自分が蒔いた種だ。
 オリビアに助けてもらったことは別として、その後、勝手な正義感と同情心から、シオンに相談せずに、リアムからのお茶会の招待を勝手に受けた。

 もしあの時断っていれば、リアムに期待させることもなく、こんなおかしな申し出をされることもなかったはずだ。

(それに、もしわたしがここできちんと断らなければ、殿下を困らせてしまうことになる。わたしのせいで殿下にご負担をかけることになるなんて、それだけは嫌)

 自分の気持ちとアレクシスの立場、それを考えれば、答えはおのずと導き出される。

 そう悟ったエリスは、リアムに断りの返事を出したのだ。