◇
それから三十分ほどして、シオンはようやく目を覚ました。
灯りが眩しい。自分はいつの間に眠ってしまっていたのだろうか。
彼はゆっくりと身体を起こし、そこでようやく、エリスの姿がないことに気が付いた。
「……姉さん?」
シオンは無意識にエリスの姿を探そうとする。
けれどそれより早く、「エリス様なら、殿下と夜の庭園を散歩中ですよ」との声が聞こえ、ハッとそちらを振り向いた。
するとそこには、ローテーブルを挟んだ対面のソファに腰かけて、どことなく冷たいオーラを放つセドリックの姿がある。
「セドリック殿……?」
シオンは驚いた。
エリスの部屋で、セドリックと二人きり。侍女の姿もない。
これはいったいどういう状況だろうか。
「あの……僕に何か御用でしょうか」
シオンはまだ、セドリックと殆ど言葉を交わしたことがなかった。
まともに話したのは、三ヵ月前の宮廷舞踏会のときだけだ。
――それは第二皇子クロヴィスから『話し合い』という名の尋問を受け、目的を洗いざらい吐かされた後のこと。
ジークフリートと共に帰りの馬車に乗る直前、セドリックに呼び止められこう聞かれた。
「ところでシオン様。つかぬことをお聞きしますが――エリス様の肩の傷は、いったいどういった理由でできたものなのでしょうか」と。
(肩の傷? 姉さんの……?)
シオンは予期せぬ質問に驚いたが、すぐにそれが、火傷の痕のことであろうと思い至る。
けれど彼はアレクシスに強い敵対心を燃やしていたため、絶対に教えてやるものかと、このように答えたのだ。
「姉さんが教えていないことを、僕が言うわけにはいきません」――と。
するとセドリックはすぐに「それもそうですね」と引き下がったため、それ以上会話は続かなかった。
それから三十分ほどして、シオンはようやく目を覚ました。
灯りが眩しい。自分はいつの間に眠ってしまっていたのだろうか。
彼はゆっくりと身体を起こし、そこでようやく、エリスの姿がないことに気が付いた。
「……姉さん?」
シオンは無意識にエリスの姿を探そうとする。
けれどそれより早く、「エリス様なら、殿下と夜の庭園を散歩中ですよ」との声が聞こえ、ハッとそちらを振り向いた。
するとそこには、ローテーブルを挟んだ対面のソファに腰かけて、どことなく冷たいオーラを放つセドリックの姿がある。
「セドリック殿……?」
シオンは驚いた。
エリスの部屋で、セドリックと二人きり。侍女の姿もない。
これはいったいどういう状況だろうか。
「あの……僕に何か御用でしょうか」
シオンはまだ、セドリックと殆ど言葉を交わしたことがなかった。
まともに話したのは、三ヵ月前の宮廷舞踏会のときだけだ。
――それは第二皇子クロヴィスから『話し合い』という名の尋問を受け、目的を洗いざらい吐かされた後のこと。
ジークフリートと共に帰りの馬車に乗る直前、セドリックに呼び止められこう聞かれた。
「ところでシオン様。つかぬことをお聞きしますが――エリス様の肩の傷は、いったいどういった理由でできたものなのでしょうか」と。
(肩の傷? 姉さんの……?)
シオンは予期せぬ質問に驚いたが、すぐにそれが、火傷の痕のことであろうと思い至る。
けれど彼はアレクシスに強い敵対心を燃やしていたため、絶対に教えてやるものかと、このように答えたのだ。
「姉さんが教えていないことを、僕が言うわけにはいきません」――と。
するとセドリックはすぐに「それもそうですね」と引き下がったため、それ以上会話は続かなかった。



