「姉さん、すぐに断って。リアム様からの手紙は、二度と受け取らないで」
「――!」
「オリビア様に同情する気持ちはわかる。でも、それとこれとは話が別だよ。リアム様のやり方はとても卑怯だ。それに姉さんは、『嫌だ』と思っているんだろう?」
シオンにそう言われ、エリスはハッとした。
そうだ。わたしは嫌なんだ、と。
アレクシスがオリビアを受け入れるかどうか心配になるのは、受け入れて欲しくないと願っているからだ。
アレクシスを他の誰にも渡したくないと、そう思っているから。
「……でも、それって我が儘なんじゃないかしら」
エリスは、シオンにポツリと漏らす。
「帝国の皇子は、何人もの妃を持つのが普通なのよ? 事実、第一皇子殿下も、第二皇子殿下も、何人も妃を持たれている。……それなのに殿下を独り占めしたいと思うなんて、妃失格じゃないかしら」
『妃は一人でいい』と言ったアレクシスのために断るならいざ知らず、自分のアレクシスへの独占欲のためにリアムの提案を拒否するのは、どうしても違う気がした。
どちらであろうと『断る』ことには変わりないのに、そこには雲泥の差がある――そんな気が。
すると、それを聞いたシオンは「気に入らない」と言いたげに目を細める。
「じゃあ聞くけど、姉さんはリアム様の提案を受け入れるの? 殿下が帰ってきたら、『オリビア様を二番目の側妃に』ってお願いするのか? それって、殿下にすごく失礼だ。もし僕が殿下の立場で、愛する妻にそんなことを言われたら、一生立ち直れないくらい傷付くよ」
「……っ」
「それに今の姉さん、酷い顔だ。もうすぐ殿下が戻ってくるっていうのに、そんな状態で殿下を出迎えるつもり? 殿下に心配をかけたいの? ――そういう気の引き方は、僕は好きじゃない」
「――!」



