十月の末の夕暮れどき。 帝都では、昨夜から激しい雨が降り続いていた。 雲は厚く、空は暗い。おまけに雷まで鳴り響いている。 そんな重たい街の景色を、リアムは自室の出窓から、冷めた瞳で見下ろしていた。 テーブルの上には、今朝方届いたエリスからの手紙が、開いたまま放置されている。 そこに書かれているのは、『申し訳ございません。先日のお申し出は、お受けすることはできません』という、短い一文。 それはつまり、『オリビアをアレクシスの側妃に』という、一縷(いちる)の望みがついえたことを意味していた。