侍女の言葉に、アレクシスは開いた口が塞がらなかった。
今朝までは冷静にしか見えなかったシオンが、よもやそのような強硬手段に出ようとは、誰が想像しただろう。
少なくともアレクシスは、シオンがエリスや使用人の前で「本心」を露わにすることなど、絶対に有り得ないと思っていた。
もしそんなことをすれば、今まで築き上げた使用人たちからの信頼を失うことになりかねない。
強かなシオンが、そんな悪手を使うはずはない――と。
だが、実際は……。
(結局のところ、中身はまだ子供だということか……)
アレクシスはシオンの寝顔をしばらくの間見つめたのち、諦めた様に息を吐く。
そして、セドリックにこう命じた。
「こいつの荷物を部屋から運び出せ。今すぐに」
すると、驚いたように目を見開くセドリック。
「まさか、追い出されるのですか……?」
恐る恐る尋ねるセドリックに、けれどアレクシスは首を振った。
「いいや。部屋を移動するだけだ」と。
そして薄っすらと笑み、こう続ける。
「移動先は、俺の寝室の隣。――意味は、わかるな?」
「――ッ」



