◇
(とにかく、ジークフリート殿下から目を放さないようにしなくては)
近衛がいるとはいえ、一瞬たりと気は抜けない。
万一にでも他国の王子に怪我など負わせたとなれば、責任問題になってしまうからだ。
せめてアレクシスがもう少し気を遣ってくれればいいのだが、道中ジークフリートと殆ど言葉を交わさなかったことを考えると、きっと頼りにはならないだろう。
現にアレクシスは今も、ジークフリートのことはセドリックに丸投げし、ひとり自由気ままに買い食いをしているのだから。
――セドリックがアレクシスの背中を呆れた気持ちで眺めていると、不意にジークフリートが話しかけてくる。
「ところでセドリック、君に聞きたいことがあるんだけど、いいかい?」
「? ええ、何でしょう」
シオンのことなら、行きの馬車の中で話したはずだが。
となると、エリスのことだろうか。
やや警戒しつつも頷くと、ジークフリートは静かな声でこう尋ねた。
「アレクシスは、いつエリス妃の正体に気が付いたんだい?」
「……なぜ、そのようなことを?」
「興味があるんだ。アレクシスがエリス妃と、どうやって心を通わせたのか。……アレクシスがあんなに丸くなったのは、エリス妃のおかげなんだろうからね」
「……丸く、なってるでしょうか?」
「それ、本気で聞いてるのかい? 説明なんてしなくても、君はとっくにわかっていると思うけどな」
「…………」
確かに、少し前までのアレクシスならば、ジークフリートの言葉を正面から受け取ることはなかっただろう。
『君を応援していた』と言われたところで、返事一つせずに退席していただろうし、そもそも、ジークフリートと席を並べることすらなかったはず。
当然、今日のように同じ馬車に乗り、共に出掛けるなど有り得ない。
それが変わったのは、エリスが嫁いできたからだ。
だが、ジークフリートは一つ大きな勘違いしている。
それはきっと、アレクシス自身も気付いていない、最も単純な事実。
(とにかく、ジークフリート殿下から目を放さないようにしなくては)
近衛がいるとはいえ、一瞬たりと気は抜けない。
万一にでも他国の王子に怪我など負わせたとなれば、責任問題になってしまうからだ。
せめてアレクシスがもう少し気を遣ってくれればいいのだが、道中ジークフリートと殆ど言葉を交わさなかったことを考えると、きっと頼りにはならないだろう。
現にアレクシスは今も、ジークフリートのことはセドリックに丸投げし、ひとり自由気ままに買い食いをしているのだから。
――セドリックがアレクシスの背中を呆れた気持ちで眺めていると、不意にジークフリートが話しかけてくる。
「ところでセドリック、君に聞きたいことがあるんだけど、いいかい?」
「? ええ、何でしょう」
シオンのことなら、行きの馬車の中で話したはずだが。
となると、エリスのことだろうか。
やや警戒しつつも頷くと、ジークフリートは静かな声でこう尋ねた。
「アレクシスは、いつエリス妃の正体に気が付いたんだい?」
「……なぜ、そのようなことを?」
「興味があるんだ。アレクシスがエリス妃と、どうやって心を通わせたのか。……アレクシスがあんなに丸くなったのは、エリス妃のおかげなんだろうからね」
「……丸く、なってるでしょうか?」
「それ、本気で聞いてるのかい? 説明なんてしなくても、君はとっくにわかっていると思うけどな」
「…………」
確かに、少し前までのアレクシスならば、ジークフリートの言葉を正面から受け取ることはなかっただろう。
『君を応援していた』と言われたところで、返事一つせずに退席していただろうし、そもそも、ジークフリートと席を並べることすらなかったはず。
当然、今日のように同じ馬車に乗り、共に出掛けるなど有り得ない。
それが変わったのは、エリスが嫁いできたからだ。
だが、ジークフリートは一つ大きな勘違いしている。
それはきっと、アレクシス自身も気付いていない、最も単純な事実。



