ジークフリートは小さく溜め息をつくと、優雅な所作で椅子から立ち上がり、アレクシスの左胸に、自身の右の人差し指をグっと突きつける。
「僕はね、心から君を応援していたんだ。だからこそ君の愚かさを見過ごせなかった。君がエリス妃を冷遇するなら、シオンの元に返してあげよう――その方がエリス妃も幸せだって。そんな僕を、君は傲慢だと責めるのかい? はっきり言って、君にだけは言われたくないね」
軽い口調ながらも、アレクシスを責めるジークフリートの冷たい瞳。
その声に、その瞳に、アレクシスは言葉を呑み込んだ。
ジークフリートのしたことが許せないのは変わらない。もっとマシな方法はいくらでもあったと断言できる。
けれどジークフリートの言うように、自分のことを棚に上げ、ジークフリートだけを責めるのは何かが違うような気がした。
それに何より、今ジークフリートは『君を心から応援していた』と言った。
アレクシスは、それが何よりも意外だった。
(まさかこいつの行動は、単にシオンの肩を持っただけではなく、俺への情の裏返しだった……とでも言うのか? そんな馬鹿な)
正直信じ難いし、気味が悪い。
そもそもアレクシスは学生時代、ジークフリートを冷たくあしらい続けていたのだ。
つまり、嫌われているならともかくとして、応援される理由など、全く思い当たらない。
「…………」
耳をつんざくような銃声が絶え間なく響き渡る中、アレクシスはジークフリートを正面から見つめ返す。
その心を、少しでも探ろうと。



