すると、流石に直球すぎたのだろう。
演習場を見下ろしていたジークフリートの瞳が、驚いたように見開いた。その顔がゆっくりとアレクシスの方を向き、パチパチと二度瞬く。
「君、相変わらずだね。僕の近衛もいるのに、気にならないのかい?」
「ハッ。周りの目など一々気にしていられるか。そもそも俺はお前を許したつもりはない。あまり調子に乗っていると、俺に寝首をかかれるかもしれんぞ。口の利き方には気をつけろ」
「――!」
刹那、アレクシスの言葉に反応したのか、近衛たちの空気がピリついた。
が、ジークフリートはすぐさまそれを制し、笑顔でアレクシスに向き直る。
「酷いなぁ。その言い方じゃまるで、僕が悪役みたいじゃないか」
「ならば、自分は正義だとでも言うつもりか? あんな騒ぎを起こしておいて、どの口が」
「まさか。正義だなんて思ったことは一度だってないよ。でもそれは君だって同じだろう? 結婚して一月もの間、君はエリス妃を放置していた。だから僕はシオンの肩を持ったんだ。当然の帰結じゃないか」
「…………」
「僕はね、アレクシス。いつだって最善を探してる。それが誰かの最良ならば、別の誰かにとっての最悪であっても仕方がないと思ってる。大切なのは、当事者の心がどこにあるのかだ。――つまりね、僕がここに来たのは、君に会うためなんだよ。そのためにクロヴィス殿下に頼んで、君をここに寄こしてもらった」
「……何? 俺に会うためだと?」
訝しげに眉をひそめるアレクシスに、ジークフリートは静かな声で続ける。
「そうさ。君に会って直接確かめたかった。あれから君とエリス妃が……君の初恋がどうなったのか。シオンはどうしているのかを、君の口から直接聞きたかったんだ」



