――結論、その書状にはこの基地の責任者である第十二師団長のサインが入れられており、ジークフリートの基地内への立ち入りを許可する旨が記されていた。
さらに、申請者の欄にあるのは第二皇子のサイン。
「!?」
(兄上が申請しただと!? しかも、申請日は一月も前……!)
一月前と言えば、アレクシスがクロヴィスから演習参加を命じられた頃である。
つまりクロヴィスは、ジークフリートがロレーヌ基地を訪問することを知りながら、その事実をアレクシスに伝えなかった――どころか、ジークフリートの基地訪問が決まったからこそ、アレクシスに演習参加を命じたということになる。
更に、よくよく内容を見てみると、『ジークフリートの身の安全はアレクシスが保証する』と書かれているではないか。
「――なっ」
(兄上め……! いったいどういうつもりで……!)
アレクシスは怒りのあまり書状を破り捨てそうになったが、寸でのところでセドリックに止められて、今に至るというわけだ。
アレクシスは、隣の席で演習の様子を興味深そうに見下ろすジークフリートに、訝し気な視線を送る。
(兄上の考えていることもわからんが、こいつの考えはもっとわからん。――とにかく今はこいつの目的をはっきりさせなければ。まさか本当に演習見学に来わけではないだろうからな)
そう考えたアレクシスは、単刀直入に問う。
「――で? ここへ来た本当の目的は何だ。今度は何を企んでいる」
「!」



