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ランデル王国が王太子、ジークフリート・フォン・ランデルは、アレクシスが学生時代、ランデル王国に留学していたときの学友である。
美しい銀髪とブルーグレーの瞳に、スラっとした細身の体躯。性格は穏やかで良心的。いつも笑顔を絶やさず、国民から愛される理想の王子。
だがそれはあくまで彼の表面的な姿に過ぎず、実際のジークフリートはかなり独善的だ。
彼は『ある者の望み』が彼自身の理に適っていると思えば、それが別の誰かの不利益になろうとも、叶えてしまおうとする。
シオンはそんなジークフリートの甘言に惑わされ、半年前の宮廷舞踏会の夜、エリスを帝国から連れ去ろうとしたのだ。――『姉を返せ』と、アレクシスに迫って。
そのときは第二皇子が駆け付けたからよかったものの、もしクロヴィスが来なければ、国際問題に発展していたかもしれない。
その事件の首謀者であるジークフリートが、何の前触れもなく姿を現した。
それも、関係者以外立ち入ることのできないはずの基地内に、だ。
当然、アレクシスは大いに警戒した。
「なぜお前がここにいる。どうやって入った」
だがジークフリートは、少しも臆することなく答える。
「人聞き悪いなぁ。ちゃんと正面から入ってきたよ」
「正面からだと?」
「うん。今日から演習最終日まで、見学させてもらうことになっているからね」
「見学? 軍人でもないお前が?」
「自国の軍が参加しているんだ。何もおかしくはないだろう? ほら、ちゃんと許可も貰ってる」
と、一枚の書状を取り出して。



