実はシオン、お茶会の間ずっと違和感を覚えていた。
先週自分を助けてくれたときも、先ほどお茶をしていたときも、オリビアからは少しも「悲しみ」が伝わってこなかったからだ。
そんな彼女に、本当に友人が――自分たちが必要なのだろうか、と。
だが、その違和感はたった今解消された。
オリビアが可哀そうだというのは、あくまでも「リアムの主張」であり、少なくともオリビア自身は、自分を可哀そうだとは思っていない。
リアムの中のオリビアと、実際のオリビアに大きな差異があることを不思議に思ったシオンは、作業を再開しながら問いかける。
「オリビア様は、結婚が嫌だとは思われないのですか? 実は、リアム様からオリビア様の結婚について、既に伺っているんです。お相手は子爵様で、家同士の決めたことだと」
そもそも、自分たちがここに呼ばれた理由は、「オリビアを慰めるため」だ。
それなのに肝心のオリビアにその気がないとなれば、いったい何のために来たのかわからない。
そんな気持ちから出た質問だったが、オリビアの口から出てきたのは「そんなの嫌に決まっておりますでしょう」という、潔い肯定で。
予想していなかった答えに、シオンは手にしていたアボカドを、うっかりオリビアに渡し損ねてしまった。
「――あっ」
白い手袋をしたオリビアの指先に当たったアボカドが、土の上に落ちてコロコロと転がっていく。
「申し訳ありません……!」
シオンは落ちた実を拾うため、慌てて脚立を降りようとする。
収穫作業をしている時点で今更な気がするが、侯爵令嬢であるオリビアに、落ちた果実を拾わせるわけにはいかないと思ったからだ。
――が、そんなシオンの視線の先で、オリビアは落ちたアボカドに手を伸ばしていた。
「オリビア様、いけません! 手袋が汚れてしまいます! 僕が拾いますから!」
先週自分を助けてくれたときも、先ほどお茶をしていたときも、オリビアからは少しも「悲しみ」が伝わってこなかったからだ。
そんな彼女に、本当に友人が――自分たちが必要なのだろうか、と。
だが、その違和感はたった今解消された。
オリビアが可哀そうだというのは、あくまでも「リアムの主張」であり、少なくともオリビア自身は、自分を可哀そうだとは思っていない。
リアムの中のオリビアと、実際のオリビアに大きな差異があることを不思議に思ったシオンは、作業を再開しながら問いかける。
「オリビア様は、結婚が嫌だとは思われないのですか? 実は、リアム様からオリビア様の結婚について、既に伺っているんです。お相手は子爵様で、家同士の決めたことだと」
そもそも、自分たちがここに呼ばれた理由は、「オリビアを慰めるため」だ。
それなのに肝心のオリビアにその気がないとなれば、いったい何のために来たのかわからない。
そんな気持ちから出た質問だったが、オリビアの口から出てきたのは「そんなの嫌に決まっておりますでしょう」という、潔い肯定で。
予想していなかった答えに、シオンは手にしていたアボカドを、うっかりオリビアに渡し損ねてしまった。
「――あっ」
白い手袋をしたオリビアの指先に当たったアボカドが、土の上に落ちてコロコロと転がっていく。
「申し訳ありません……!」
シオンは落ちた実を拾うため、慌てて脚立を降りようとする。
収穫作業をしている時点で今更な気がするが、侯爵令嬢であるオリビアに、落ちた果実を拾わせるわけにはいかないと思ったからだ。
――が、そんなシオンの視線の先で、オリビアは落ちたアボカドに手を伸ばしていた。
「オリビア様、いけません! 手袋が汚れてしまいます! 僕が拾いますから!」



